雑記

音楽のこととか 日々のこととか 大学生

『憂、燦々』を聴く

夜、一人部屋で寝っ転がって天井を眺める。特にやらなくてはいけないことも無いし、やりたいこともない。贅沢な時間の使い方のはずが、どこか虚しく感じる。スマホSNSを流し見ると花火大会に行ったという内容の投稿が目に付く。僕は逃げるようにイヤホンを耳に押し付ける。

 

イヤホンからクリープハイプの『憂、燦々』が流れる。どこかノスタルジックでいて物哀しいギターリフのイントロが終わると、尾崎世界観の独特な声と16分で刻まれるハイハットの音が心地良いAメロへと曲は続く。

 

そのままゆったり流れるように曲はBメロに。しかし歌詞はそれと対照的に僕の心のなにかをざわ立てるのだ。恋人に対してどう接すれば良いのか悩む気持ちを歌っているこの曲は、「優しいだけじゃ 意味ないし」という強烈なフレーズと、直後不意に鳴り響くピアノの音を経てサビへと入っていく。

 

僕は恋愛経験が決して多いわけではない。いや、確実に少ない方であるという自負さえある。それでもBメロの最後のフレーズにはハッとせざるを得なかったのだ。優しさが返って相手を引かせてしまったりとか、独りよがりの優しさだったりとか、そもそもその優しさは自分を守る、保身の優しさであったりとか。薄っぺらい自分の恋愛経験と曲を重ね合わせて、脱力感にも似た虚無の感情を覚える。

 

いつのまにか曲はアウトロへと向かう。「離さないでいてくれるなら なんでも叶えてあげるから」。曲中繰り返し歌われるフレーズでラスサビが締められると、イントロと同じメロディーでアウトロが始まり、そのまま余韻を残しつつも最後ハイハットオープンできっちり終わりが告げられる。

 

ふと窓の外に目をやる。当然花火なんかは見えない。きっと今年は花火を見に行く機会はないだろう。もし、いつか一緒に花火を見に行ける人が僕の前に現れたら、優しさを押し付けるだけじゃなくてきちんとその人と向き合えるだろうか。僕は何故かまだ尾崎世界観の声を聴いていたくなって、もう一度再生ボタンを押そうと携帯に手を伸ばす。(8/4 23:33)